最近は夏だけでなく、1年を通じてアイスコーヒー派の人も増えてきています。
今回はアイスコーヒーの歴史を紐解きつつ、美味しい作り方をご紹介します。
自分で作るアイスコーヒーは手間がかかりますが、市販のリキッドアイスコーヒーとはまた違う味わいです。どの作り方が自分好みなのか、いろいろ試してオリジナルアイスコーヒーをお楽しみ下さい。

・アイスコーヒーの発祥はどこ? ▼
・日本でアイスコーヒー文化が根付いた理由 ▼
・ヨーロッパでアイスコーヒー文化が根付かない理由 ▼
・実際のヨーロッパでのアイスコーヒー体験 ▼
・アイスコーヒーに濃いコーヒーを使う理由 ▼
・すぐ作れる!簡単アイスコーヒーレシピ・急冷式 ▼
・ホットコーヒーをアイスコーヒーにするには?・水冷式 ▼
・アイスコーヒーを作り置きするなら・水出し式 ▼
・氷を入れる順番で味が違う? ▼
・アイスコーヒーが薄くならない裏ワザがあるんです ▼
・アイスコーヒーに適した豆をご紹介 ▼

アイスコーヒーの発祥はどこ?

諸説ありますが、北アフリカのアルジェリアがフランスの植民地だった頃に、現地のマサグランという町で地元の人がコーヒーに氷を入れて、冷まして飲んでいたことがきっかけだと言われています。
しかしヨーロッパではあまり定着せず、アメリカでは1990年代に大手コーヒーチェーンで販売しはじめ、今では広く知られた飲み物になっているようです。日本では明治時代に神田の氷屋で、氷コーヒーというメニューがあり、大正時代には冷やしコーヒーとして喫茶店のメニューに登場しはじめていたようです。
昭和時代には喫茶店でオーダーするときに「冷コー」という呼び方が定着していたようですが、現在この呼称はあまり聞かなくなりました。とは言え日本では、かれこれ100年以上も親しまれている飲み方、と言うことになります。

日本でアイスコーヒー文化が根付いた理由
蒸し暑い夏の気候
日本の夏は高温多湿で、蒸し暑さが厳しいのが特徴です。暑さをしのぐために冷たい飲み物が求められ、自然と冷たいコーヒーの需要が高まりました。特に夏の喫茶店では、氷をたっぷり入れたアイスコーヒーが体を冷やしつつ、コーヒーの苦味と香りを楽しめる飲み物として人気を博しました。
戦後の喫茶店文化と“純喫茶”の隆盛
高度経済成長期の1950〜70年代、日本全国で喫茶店が急増しました。中でも「純喫茶」と呼ばれる昔ながらの喫茶店は、落ち着いた空間と丁寧なコーヒー提供で人々の憩いの場となりました。夏季限定のメニューとしてアイスコーヒーが定着し、多くの人が涼を求めて足を運ぶようになったのです。この時代の喫茶店文化が、日本のアイスコーヒー普及の土台を築きました。
家庭用のコーヒーメーカーや缶コーヒーの普及
970年代以降、家庭でも簡単にコーヒーを楽しめるコーヒーメーカーが普及しましたが、少し前の1969年には缶コーヒーも登場しました。24時間購入可能な自動販売機により、いつでもどこでも冷たい缶コーヒーを手軽に楽しめるようになったことは、アイスコーヒー文化が日本に根付いた理由のひとつです。
夏の清涼飲料市場の多様化
日本の清涼飲料市場は、ジュースやお茶だけでなく、コーヒーも冷たい飲料の一大ジャンルとして発展しました。さまざまな味や甘さ、ミルク入りやブラックなど多彩な商品が登場し、消費者の好みやライフスタイルに合わせて選べるようになりました。これによりアイスコーヒーは、単なる“暑さしのぎ”の飲み物から、日常の楽しみとして、すっかり日本の文化として定着しています。
文化的な柔軟性と食習慣の多様化
日本は歴史的に多くの外来文化を取り入れながらも、それを自分たちの生活様式や好みに合う形にアレンジしてきました。コーヒー文化も例外ではなく、欧米のホットコーヒー文化を尊重しつつも、夏には冷たいアイスコーヒーを楽しむ習慣が自然と根付いています。最近、コーヒー好きな若い人たちは、1年を通してアイスコーヒーを好む傾向もあるようですが、多くの日本人は季節に合わせた飲み物の切り替えが日常的であり、ここ数年の日本の夏の長さと暑さは、さらに夏の冷たい飲料需要を後押ししています。

ヨーロッパでアイスコーヒー文化が根付かない理由
「冷たいコーヒーは魂がない」──伝統文化が拒むスタイル
イタリアのバール、フランスのカフェなど、ヨーロッパのコーヒー文化には数百年の歴史と誇りがあります。エスプレッソは“香りと温度”で完成する芸術であり、氷で冷やすなどは「味を壊す」「敬意がない」とすら感じられることも。ゆえにアイスコーヒーは、単なる嗜好の違いではなく、“コーヒーへの態度”の問題として敬遠されがちなのです。
冷たい飲み物は体に悪い?──身体感覚と習慣の壁
冷たいコーヒーに対する抵抗感は、美意識だけでなく身体感覚にも由来します。東欧やドイツなどでは「冷たい飲み物は胃に悪い」という考えが根強く、朝や食後には温かい飲み物が基本。さらに、冷たい飲料は“病気の時に飲むもの”という民間的な位置づけもあり、アイスコーヒーが日常に浸透するのは、生理的にも心理的にも高いハードルがあるようです。
生活シーンでの冷たい飲み物の位置づけとは──無意識の常識
フランスの家庭では、朝は温かい飲み物か常温の飲み物が優先されます。ドイツやイタリアでは外食時も水は常温が基本で、冷たい水は胃に刺激が強すぎるとされ、レストランで「氷なしの水」を頼むのが一般的。逆に氷入りの水を出すと不親切と感じられることもあります。東欧では病気のときに冷たい水を少しだけ飲ませる、というのが例外的に認められたシチュエーション。健康な状態では冷たい飲み物を避けることが“常識”という感覚があります。
このような文化的下地があるため、「冷たいコーヒー」は無意識に「体に悪そう」「病気のとき以外は飲みたくないもの」と結びついてしまうことがあり、健康意識の高い中高年層ほど敬遠する傾向が見られます。つまり、単なる嗜好の問題ではなく、長年の身体感覚の刷り込みが根本にあるのです。

実際のヨーロッパでのアイスコーヒー体験
数年前、真夏のドイツ、ミュンヘンを訪れたときのことです。街のスタンドで「ICE COFFEE」の文字を見つけ、胸が高鳴りました。というのも、それまではどこのカフェでもホットばかり。ヨーロッパでは冷たいコーヒーを飲む文化がほとんど根付いていなかったからです。
期待に胸をふくらませて購入してみたところ出てきたのは、すでに氷が解けきっている薄く茶色い液体で、見た目はほぼ「麦茶」でした。このときチラッと見えたカウンターの奥では、熱いエスプレッソに氷を3個ほど入れている様子が垣間見え、少し不安になったのですが・・・結果は予想以上でした。

ドイツのスタンドで買ったアイスコーヒー
口にしてみると、「ものすごく薄まった、ぬるいコーヒー」といった感じです。風味はほとんど消えていて、「これは一体何を飲んでいるのだろう?」と、一瞬自分を見失うほどでした。周囲を見回しても、誰ひとりとしてアイスコーヒーを頼んでいる人はいません。「やっぱり、ここでアイスコーヒーを飲むのは少数派なのか」と実感。後日、別のカフェに立ち寄った際、思い切って「アイスコーヒーってありますか?」と聞いてみたところ、スタッフの方はちょっと怪訝そうな顔をして一言。「ないですよ……普通、飲まないでしょ?」その表情と言葉に、ここはやっぱりホットコーヒー文化なのだとしみじみ感じました。
とはいえ、ヨーロッパ全体がそうかというと、実はそうでもありません。例えば、別の機会に訪れたハンガリーのブダペストでは、街中のスタンドでごく自然にアイスコーヒーが売られていて、驚いたことがあります。試しに一杯買ってみたところ、これが日本で飲むアイスコーヒーと同じようにキリッと冷たくて、とてもおいしかったのです。

ハンガリーのスタンドで買ったアイスコーヒー
同じヨーロッパでも、国や地域によってアイスコーヒー文化の浸透度はまったく異なるのだと感じました。ドイツでは珍しがられたアイスコーヒーも、ハンガリーではすでに日常の一部なのかもしれません。ただ、ヨーロッパ全体で見るとやはり「アイスコーヒー」は珍しく、もっと言えば「氷の入った飲み物」に出会う事はほとんどありません。ポーランドのクラクフで飲んだアイスラテも氷が入っておらず基本「ぬるい」スタイルでした。

ポーランドで飲んだアイスラテ
こうした体験を通じて、アイスコーヒーひとつとっても、文化や気候、嗜好がこんなに違うことを実感できます。


アイスコーヒーに濃いコーヒーを使う理由

ホットコーヒーに氷を入れると、水っぽく薄い味になってしまいます。氷を入れても薄くならないように あらかじめ、濃い味わいのコーヒーを抽出しておくと、氷を入れてもしっかりした味のアイスコーヒーを楽しめます。

すぐ作れる!簡単アイスコーヒーレシピ・急冷式
いつも冷蔵庫にストックしているリキッドアイスコーヒーを切らしてしまったけれど今すぐ飲みたい!そんな時には、急冷式にチャレンジ!
コーヒーの粉の分量を増やして濃い目に抽出したホットコーヒーにたくさんの氷を一度に投入します。よく混ぜて温度が下がったらグラスに注いで氷をいくつか浮かべるとできあがりなので、急なお客様にもすぐ出せる、簡単でお手軽な方法です。
レシピはコチラ ▶


ホットコーヒーをアイスコーヒーにするには?・水冷式
普通にホットコーヒーとして入れた濃度に氷を直接入れると味が薄くなってしまいます。
そこでオススメなのが、水冷式です。水冷式は氷水をたっぷりいれたボウルや深さのある大きな器に抽出したホットコーヒーが入ったサーバーをそのまま入れて冷やす方法です。
サーバーの周りから温度を下げることで、コーヒーの味が薄まることなくアイスコーヒーにすることができます。
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アイスコーヒーを作り置きするなら・水出し式
せっかく作るなら、作り置きしてすぐ飲めるようにしたいですよね。そんなときには、水出し式を是非お試しください。
水出し式は、大き目のお茶パックにコーヒーの粉を入れ、サーバーにこのコーヒーパックとお水を入れて冷蔵庫で8時間寝かせるだけで出来上がります。
注意点としてコーヒーパックは、長い時間いれたままだと渋みがでてしまうので、8時間後には必ず取り出して下さい。
例えば、夜11時頃に仕込んで冷蔵庫に入れておけば、朝の7時にはできあがり!自家製の美味しい水出しアイスコーヒーで朝食をどうぞ。
レシピはコチラ ▶



氷を入れる順番で味が違う?
急冷式の方法でホットコーヒーをサーバーに抽出したあと、サーバーに氷を投入せずグラスに氷をたくさん入れてコーヒーを注ぐ方法とグラスにホットコーヒーを入れたあと氷をたくさん入れる方法、実は味が違うんです。
先に氷を入れる方法は、スッキリした味わい、あとから氷を入れる方法は、コーヒーの味そのものが楽しめる味わいになります。
お好みの方法をチョイスしてお試し下さい。

アイスコーヒーが薄くならない裏ワザがあるんです
あらかじめ製氷皿に抽出したコーヒーを入れて凍らせておきます。
アイスコーヒーを楽しむときに普通の氷ではなく、このコーヒー氷を入れれば、冷たくて薄くならないアイスコーヒーのできあがり!
時間があればコーヒーの代わりに牛乳や豆乳をいれて、カフェオレもオススメです。
おしゃべりしながらのカフェタイムにもピッタリの裏ワザを、是非お楽しみください。


アイスコーヒーに適した豆をご紹介
ミカド珈琲では、アイスコーヒーに適した豆を味わい別に3タイプご用意しております。
自分にぴったりの方法で自家製アイスコーヒーを極めて、家族や友人に涼やかなおもてなしをしてみませんか?
毎日の暮らしをちょっぴり豊かに、手間をかけてつくるコーヒーライフを満喫してみてくださいね。


この記事を書いた人:オンラインストア店長
・J.C.Q.A認定コーヒーインストラクター2級 https://kentei.jcqa.org/
・アスリートフードマイスター3級 https://athlete-food.jp/assn/
この記事を書いた人:C.Sさん
・J.C.Q.A認定コーヒーインストラクター2級 https://kentei.jcqa.org/
監修:ミカド珈琲スタッフ M.Tさん
・J.C.Q.A認定コーヒーインストラクター1級 https://kentei.jcqa.org/
・SCJA認定アドバンスド・コーヒーマイスター https://scaj.org/meister/about-meister
・コロンビアFNC認定 マイルドコーヒー鑑定士 https://cafedecolombia.jp/mild-coffee-specialist/